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元気を捜せ!⑭

1:粕谷隆夫 :

2021/09/19 (Sun) 06:51:33

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_881100/881043/full/881043_1632001893.jpg  釧路港のステベを独占しているM社のSさんが連れて行ってくれたバーは、外側は大きなウヰスキー樽の形で、中に入ると船室(キャビン)になっている。床は落花生の殻がたっぷりと厚みをもって敷き詰められていました。つまみはもちろん落花生。かれは8分の1、ロシア人の女性の血が入っている。「この人、知っている?ユージン・アクセノフ」「知らないが、エブゲーニン・アクショーノフだろう」「六本木で外国人向けのインターナショナル・クリニックをやっているが、無国籍ドクターだよ」。

 ロシア人の父母は満州に亡命。彼は満州国籍を得るが、満州国の崩壊とともに国籍を失う。平成になって日本永住権を取得するが無国籍のままである。「もういらないよ、国籍なんか何の役にもたたない」ときたもんだ。

 「医師」という職業に初めて出会ったのは7歳のとき。ロシア革命から逃れた父の亡命先であり、アクショーノフの出生地でもあるハルビンのドイツ系病院だった。風邪でもうろうとする意識の中、聴診器を首から下げた白衣姿はとても特別な存在に見えた。そのとき処方された甘い液体の風邪薬も、幼い彼を喜ばせた。「人助けもできるし、なんて面白そうな職業なんだろう」と思う。10年後、父が経営する牧場に、当時軍人だった津軽義孝(常陸宮妃華子さまの父)が馬を買いに訪れた。「医者になりたい?」。昭和18年に来日、東京慈恵会医科大から医者の道を歩きだす。

 「50年以上クリニックをやっているが、患者に国籍を聞かれたことなんかないよ」と言うが、やはり時代に翻弄されています。終戦と同時に舞い込んだ仕事は、米軍病院での通訳。担当した患者の中に、松岡洋右や大川周明たちがいた。冷戦が本格化すると、今度は連日、何者かに尾行される。ソ連のスパイと疑われたのだ。使ったこともない通信機を「横浜市緑区に埋めていた」といううわさを立てられる。今は笑い話だが。

 ロシア語やドイツ語、日本語を使いこなすアクショーノフが六本木にクリニックを開くと、当時としては珍しい外国人向け病院として、またたく間に評判が広まる。近隣のホテルや大使館からも往診の依頼が相次ぐ。一方で、日本で夫が死亡するなどして、生活が困窮し、帰国すらままならない人も見えてくる。かれはこうした患者からは治療費をとらない。「赤ひげ」とのうわさが立つ。ここでかれの名言。「偉いことをしているわけではない。金のない人から取ろうとしたって無理。金持ちも貧乏人も病気は一緒なんですよ」。

 看護師の山本ルミ(41歳)は、今日もクリニックの待合室を埋める患者を見つめ、アクショーノフの尻をたたく。診察室の壁一面には幼い患者たちの写真が張られている。「元気な限りは引退する気はないよ。それで死んだらしようがないけれど、この生活を続けられれば幸せだな」。

 ごもっとも!

2:K.Murano :

2021/09/19 (Sun) 13:18:35

看護師の山本ルミさんが本を書いているわけですが、そこからの引用だったのでしょうか。

アクショーノフ先生はすでに7年程前に他界されています。

以下、ウィキペディアのアタマの部分から。

━━「エフゲニー・ニコラエヴィチ・アクショーノフ(ロシア語: Евгений Николаевич Аксёнов、1924年3月5日 - 2014年8月5日)は、日本在住のロシア人医師。英語読みでユージン・アクセノフ(Eugene Aksenoff)とも呼ばれる。

専門は外科で、特に腹部外科。世界保健機関(WHO)の指定医でもある。東京都港区麻布台、飯倉片町の交差点そばに「インターナショナル・クリニック」を開設、在日外国人の診察の他、来日する著名な外国人の滞在中の健康管理などでも知られた。

1945年の満州国崩壊以後、現在まで無国籍を通している。日本の永住権は2000年3月に取得。日本語、英語、中国語、ロシア語、ドイツ語、現代ギリシャ語の6つの言語を使いこなす。」
3:粕谷隆夫 :

2021/09/20 (Mon) 06:50:59

 M社のSさんが釧路で手渡してくれた新聞の記事です。自分がちょっと感動した切抜き記事が20年分くらい会社の書庫にあり、吉澤編集長が設定してくれたこの談話室【水源地】がきっかけで、おそらく死亡した方々も生き返ってくれております。

 でも在日ロシア人のシンボルとは知りませんでした。


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