カザフスタンファミリー6名様ご一行 続き - 美水正一
2025/05/11 (Sun) 06:36:36
5月7日
カザフファミリー6名の見送りである。アテンド内容は;
朝9時半ヒルトンお台場出発、成田空港第一ターミナル南ウイングまでの見送り。出発便はアシアナ航空101便 デパーチャータイムは13:20。ホテルが空港にアクセスしやすい位置にあるので、ホテル出発9時半で設定とのこと。前回問題のあった車両については、大型スーツケース6つを運ぶにも十分なスペースを持つハイエースグランドキャビンを予約済。車両ナンバー、運転手名、メールアドレス、携帯番号すべて入手済みである。今回Tさんはいない。人事査定の役向きはなく、気楽である。時間通りに出迎え、チェックアウトを澄ませ予約済の車に乗り込めば、仕事は終わったも同然であり、本日の仕事は楽勝の筈だ。
9時にはホテルに到着。運転手に電話する。既にホテルの車寄せに待機していると。客の出てくる導線を確認しソファに座りしばし新聞を広げる。9時20分、客の姿を捉える。ご主人と男の子1名のみで、荷物も手にしていない。聞くと、「昨日は楽しかった。昨夜帰りが遅くなりこれから朝食だ」とのこと。9時半出発だが、と質すと、「悪い、悪い、チェックアウトは9時45分頃になりそう。」との返事。もともと出発時間に余裕はある。待機中の運転手に状況を電話で連絡をする。
時間は9:30。予定した出発時間である。ファミリー一行はまだ現れない。運転手から電話がきて、ホテル側から車寄せが混んできたので1階のバス発着場に車両を移動せよと指示されたとの報告。フロント階の1階下にあるバス発着場の位置を確認してから、フロント階に戻り、カザフファミリーを待つ。再び、旦那を発見。どうやら朝食を済ませたようだ。時間は9時45分。待ち合わせ場所が1階下のバス発着場に変更になったこと、僕は、そこで待つと旦那に伝えエスカレーターで降下する。
待つこと更に15分、10時丁度、12歳と14歳の息子2名がエレベーターから出てきた。ポーターがラゲジカートにスーツケースを搭載して後に続く。彼らを待機中の車に案内し、スーツケースの積み込みを終える。更に待つこと5~6分。ご主人、奥さま、残りの子供2名がようやく登場。ご夫婦とも機嫌は上々のようである。道中、今回の日本滞在の感想を聞いたところ大満足、とのこと。ジャンボタクシーはWiFiがつながるので充電もできるし、ネット検索、ユーチューブ視聴もOKと伝えると、子供たちは早速各自のスマホを取り出し画面を見入る。
運転手に東京駅で一行を迎えた際、タクシー3台に人と荷物を分散移動するのが大変であった話を伝え、東京駅からホテルまでの移動でもジャンボタクシーが使えるか聞いたところ、もちろんOKとのこと。停車場もタクシーの降車場を使うなど工夫は可能との答え。ところで料金は、ということになり、前回タクシー3台で料金が¥12000弱であったと告げると、さすがにその料金ではサービスできない。もっとかかるとのこと。しかし、金満インバウンド客にとってはさほどの出費ではない筈。3台のタクシーで右往左往するくらいならジャンボタクシー1台を利用した方が良かったのではないかと思いつつ、車は順調に走行。1時間弱で成田空港第一ターミナル南ウイングに到着。
台車を2台確保、スーツケースの積み込みを手伝い、空港施設構内へ。奥さまに、このまま帰国かと聞いたところこれからソウルに飛び、韓国に20日ほど滞在するのだとの答え。金満家族の旅行は我々とはずいぶん規模が違うのだと、感心する。
アシアナ空港のカウンターまで同行。少し列に並んだものの、彼らの搭乗手続きが始まった。カウンター付近は混雑している。ご夫婦ともども英語も堪能なご様子なので、僕は少し離れた位置で様子を見ることにする。ちょっと時間がかかっているようである。その内、下の子二人(上が8歳か9歳の女の子で下が7歳の男の子)がけんかを始めた。最初は言い合いだったが、小突き合いが始まった。長男と思しき14歳が仲介に入り、二人を諭す。下の子もお兄ちゃんの諫めには従うものだ・・・などと眺めているとカザフ人の奥さまからチェックインカウンタへ来いと声がかかる。さて、何があったのか?奥さまは少し興奮して、アシアナ航空の制服を着たグラウンドスタッフと対峙している。旦那は少し離れてその様子を見ている。どうやら搭乗手続きは奥さま主体で進めているようだ。
奥さまが僕に向かって、あなたは何のためにここへ来たのだ、我々の通訳をする為ではないかと詰問する。僕は、その通りである、すみません。ところで何があったのですかと、尋ねる。奥さまのお話では、航空機の席を2階席後部最前列から2名づつ3列、計6名まとめて予約していた筈なのに搭乗手続きの段階でスタッフがダメと言う、理由を質して欲しいと僕に迫る。一方、グラウンドスタッフは若い女性だが、独りでは対処できぬためか女性上司に状況を説明している。聞くと両者は韓国語で話しているではないか!僕は一昔前の冬ソナのペ・ヨンジュンではないし、今はやりのBTSのメンバーでもない。韓国語はアンニョンハセヨとキムチ以外は知らないのだ!カザフ婦人に僕は、韓国語が話せない、と告げると「一瞬、使えない奴!」という表情をされた。「ともかく日本語で聞いてみる」として、グラウンドスタッフに話しかける。幸いなことに彼女は流暢な日本語で状況を説明してくれた。どうやら彼らの希望する席は2階席の後部右側、最前席とその後ろの席、更にまた、その後ろの席、2名ずつ6席らしい。この席はデュオシートというふたりがけが売りのシートである。最前席は足楽シートであるが、非常事態が発生した際の非常口ドアのある席である。お客様は最初子供二人を非常口席と、おっしゃたが、それはお断りした。いざという時子供では対処できないからである。それではその席にご夫婦2利、大人が座り、その後に、他の4名が2名づつ座りたい、とおっしゃるが、そもそも、非常事態が発生した場合、この扉を開放しなければならないので、出来れば一般開放はご遠慮願いたい。何故予約が出来たのかも不明である。又、大人と子供が分かれて座ることも14歳、15歳程度の子供であればともかく10歳以下の子供の二人掛けは推奨できない、大人と子供のペアーに分かれて座って欲しいと頼んでいる、と。ともかく、このエリアでまとめて6席は確保できない。4席と2席、あるいは3席が別々の列に分かれていただければ席を確保できるがどうかと、提案しているが納得いただいていない・・・といった説明である。その内容をカザフ婦人に伝えると「非常口に子供を座らせられないのは理解している、だからその席は大人2名が座ると言っている、予約では通っているのに、家族がばらばらに座ることは承服できない」との答え。どうやらお互いが完全には意思の疎通ができていないようである。旦那からも奥さまに、グランドスタッフは最初からそう言っている、お前の解釈が違っていたのでは、と夫婦間の認識にも相違が生じている。旦那としては、ともかく、家族6人まとめて座れることを原則に席を確保して欲しいということで、その旨アシアナ側に伝える。その後、年長の男性スタッフも加わりタブレットを操作しつつ、他の係官と電話連絡をし始めた。カザフご夫妻には、現在アシアナ側がベストなバリエーションを模索中なのでもう少し待って欲しい、と伝える。しばらくすると、ようやく結論が出た。1階席であれば6人まとめて座れるよう調整がついた、という。どうやら2階席の方が料金が割高だが、1階席まで選択肢を増やせばカザフファミリーの要望通りまとめて6席の確保が可能となったようだ。こうしてシートの問題は解決、それぞれの荷物にチェックイン情報をもとに作られた、バーコード入りのタグが取り付けられ、コンベアに流されてゆく。僕は彼らを搭乗ゲートへ案内し、これにて今回のミッションは完了である。その後、彼らは手荷物の保安審査、出国審査へと向かうことになる。
彼らは英語が堪能なので、チェックインに問題ないと思い、最初はトラブルが起きている事に気が付かなかった。結果としては何とかなんとかまとまったが、空港へのアテンドは車に乗せればほぼ終了と考えた自分を反省、最後まで気が抜けないものと、痛感した。
尚、その後調べたところでは、アシアナ航空では2023年5月26日、非常口座席座った男性の乗客が、大邱(テグ)空港着陸直前、上空約213メートル付近を下降中に非常口を開けるというトラブルが発生したらしい。この男性は、失業、失恋などによる過度のストレスにより早く航空機から降機したいとの衝動からこのような行為に及んだとされており、該当機はドアを開放したまま着陸したとのこと。この事態で、約190人の搭乗客が不安を訴え、9人が呼吸困難に陥り病院へ運ばれた。
これによりアシアナ航空は、該当機と同じA321型機の一部非常口座席の販売を停止するとしており、満席時も販売しない予定となるとしている。今回の機材がA321型機であったかどうかはわからないがこの事件が、今回のカザフファミリーの座席の予約問題に影響していることは事実のようだ。(2025年5月11日)