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元気を捜せ!⑲

1:粕谷隆夫 :

2021/09/24 (Fri) 05:56:56

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_881100/881043/full/881043_1632430616.jpg  秀才ぶりは明らかです。15歳で旧制一高に合格しながら所要年齢に達せず、入学まで1年待機。東京帝大の哲学科では数多くの思想家を育てたケーベル先生に学び、満点の卒論で「恩賜の銀時計」を拝受した。欧州へ留学してスコラ哲学の教授になるよう勧められます。「『いき』の構造」で知られる哲学者・九鬼周造や、戦後文相になった哲学者・天野貞祐とは、生涯の親友となりました。

 岩下には「中世哲学思想史研究」などの著作があります。挑んだのが、「信仰と理性」をどう考えるかという、ヨーロッパ文明の根本をなしている問い。信じることと考えることを分離せず、一つのこととして捉える哲学。理性ばかり重視して、信仰を個人の領域に閉じ込めてしまう近代思潮とは、明らかに異次元の哲学を自分のものにしていました。政治思想史の半澤孝麿(当時78歳)は、「言葉をこれほど正確に日本語で使うことのできた思想家はいない。最善にも最悪にもなりえる人間を、極限まで見つめられる、温かくも冷徹な知性の持ち主だった」と語る。

2:天道公平 :

2021/10/07 (Thu) 00:45:11

〈岩下壮一〉 何と懐かしい名であろう!

ギャンブルにのめり込み人生を棒にふる前の私は、岩下壮一の生き方に憧憬の念を抱くような求道者的な感性を備えていたように思う。

その頃の私は、イエズス会系の大学で学んでいた影響もあり、カトリック系の出版社や書店(中央出版社とかエンデルレ書店とか)が身近な存在であったから『岩下壮一全集』(全9巻、中央出版社)は、避けて通ることの出来ない関門のように感じていた。カトリックの思想を理解できずに、フランス文化の真髄に接することは出来ないだろうと思っていた。

カトリックの思想は私の理解の範疇を遥かに越えていた。私には縁のない世界の話であった。しかし、信仰心のかけらもない私にとってさえ、「信仰と理性」の狭間で揺れ動く岩下壮一の文章は胸に響くものであった。

粕谷大人の引用している半澤孝麿の岩下評、「言葉をこれほど正確に日本語で使うことのできた思想家はいない。最善にも最悪にもなりうる人間を、極限まで見つめられる、温かくも冷徹な知性の持ち主だった。」の前半部分は承服しかねるが、後半部分は諸手を挙げて賛意を表したい。

付記∶粕谷大人のこの投稿を読んで、『岩下壮一全集』に取り組んでみようと思う奇特な人はまずいないだろうが、文庫化されている著作が2冊あるので、いちおう紹介しておく。

①『信仰の遺産』(岩波文庫)
②『カトリックの信仰』(ちくま学芸文庫)
クリスチャンでもない人が煩瑣な神学的議論に付き合う必要はないので、②を読んだ方が理解しやすいだろうと思う。

岩下壮一の文章の底流には、エディト・シュタインやシモーヌ・ヴェイユ、須賀敦子や若松英輔と同質の香りが漂っているように私は感じます。

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